政府が6月上旬に策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に、医療現場でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する基盤となる「全国医療情報プラットフォーム」の創設を盛り込むことが26日、分かった。医療機関や自治体が電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)、予防接種などの情報を共有し、患者が最適な治療を受ける環境を整備したり、感染症の流行状況などを的確に把握したりする狙いがある。
医療の現場では、デジタル化の遅れによる弊害が目立っている。医療機関や薬局をオンラインでつなぐシステムが乏しいため、患者の治療経過や投薬情報などを共有できないケースが多い。自治体が行う予防接種や検診の情報も、十分活用できずにいる。
政府には、新型コロナウイルス対応をめぐる苦い教訓もある。医療機関と保健所が感染者の情報をファクスでやり取りするケースが多く、感染の全体像の把握が遅れた。
そこで、骨太方針には医療のデジタル化を強力に進めるため、首相を本部長とする「医療DX推進本部」の設置を明記。病院や薬局、自治体などをデジタル情報でつなぐプラットフォーム作りを進める。
プラットフォームは、国民の医療保険の資格履歴を一元的に管理し、医療機関が患者の保険資格を確認するための「オンライン資格確認システム」を活用する。現在は現物の健康保険証で資格確認しているケースが多いが、骨太方針では、全国の医療機関や薬局に、来年4月からオンラインシステムの導入を原則義務づける方針を明記する。
さらにプラットフォームにつなぐ電子カルテの規格を標準化し、どの医療機関でも患者の情報を共有できるようにする。
マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」がシステムにアクセスする入り口ともなることから、医療機関が顔認証付きカードリーダーを導入するための支援も行う。
(2022年5月27日 産経新聞 より転載)